題詠blog*久野はすみ


by hasumikan

題詠blog2012まとめ(後篇)

051:囲 山吹の花には早き旅なれど囲炉裏をかこむ幸いのあり
052:世話 世話物の義理人情にかたむきて梅田の橋へこころを飛ばす
053:渋 軒というやさしきものに守られて渋柿の実は甘くなりゆく
054:武 いにしえの武具馬具武具馬具三武具馬具博物館をゆっくりめぐる 
055:きっと この妻もきっと明日には死ぬだろうクライムノベルを閉じて眠りぬ 
056:晩 晩白柚コンフィチュールの味わいは指ふれあわぬ恋のごとしも
057:紐 用済みになるまでの日をしめすため手帳は黒き紐を垂らしぬ
058:涙 ねむの木の涙に肩をぬらしつつどこまでも歩きたき春の宵
059:貝 貝印カミソリいつもしまわれて鏡台は母のしずかな浜辺
060:プレゼント 素晴らしきチェロのライブを探し当てプレゼントせりフォロワーさんに
061:企 また何か企んでいるファミレスのオレンジ色のメニューの陰で
062:軸 軸足に体をのせてゆくコツを知りたるは夏の撞球場
063:久しぶり 久しぶりに帯を締めれば母よりも叔母に似ておりわたしの肩は
064:志 山手線のダイヤ乱るるホームにて志望と志願の違いを思う
065:酢 焼きたての秋刀魚じゅうじゅう音をたて愛なのだろう酢橘を搾る
066:息 フルートは春楡の枝みずみずと息ふきこめば青葉がゆれる 
067:鎖 絡まりし細き鎖をほどきたる指がたちまちわたしを鎖す
068:巨 終わってもかまわぬなどと言いながら見に行くだろう巨石の群を
069:カレー 作中に生きて死にたること羨し雪原をゆくアンナ・カレーニナ
070:芸 安芸灘に日の沈むころゆっくりと向きを正せり船の艏(おもて)は
071:籠 籠城はまだやぶられずささくれの指に塗り込む馬油少々
072:狭 とろとろと葛湯とけゆく夜の戸は狭くて影を呼びこむばかり  
073:庫 喩ではなく現実としてある朝は冷蔵庫より鍵を見つける
074:無精 ひだまりにただ撫でられているだけの無精な猫となりたき土曜
075:溶 溶き芥子ひとさじ添えたバラ肉のほろりくずれる愛はこわいね 
076:桃 桃として桃とむきあう七月のかがやく風の過ぎ去るまでを
077:転 しまなみをゆく自転車は知っている橋へとつづく坂のつらさを
078:査 再検査通知を受けて良性と知るまで思いしことは秘密に
079:帯 幾たびも結ばれたるをおしまいにいっそう強く結ぶ帯締め
080:たわむれ たわむれの八月は過ぎ鞄から白き風切羽をとりだす
081:秋 秋霖のほの暗き日に運ばれてくるものがある息つめて待つ
082:苔 苔玉に話しかけつつ水をやるそういう人に来世はなろう
083:邪 今日のわれをしいて入れるとするならば邪悪なパンダというカテゴリー
084:西洋 ふくよかな少女の肌も旅立てり国立西洋美術館展
085:甲 りんご飴金太郎飴はっか飴なまめかしきは鼈甲の飴
086:片 蜂の巣をたたき落とせしその日よりときおり襲いくる片頭痛
087:チャンス われはいまチャンスメーカー夏雲はわきたち滝はしぶきをあげる
088:訂 貝殻を拾う浜辺に次々とだされるだろう改訂版は
089:喪 これは絽よこちらは袷この無地を着せてと母は喪を待つごとく
090:舌 珍しい鳥と思えばまた百舌か独りぼっちで高鳴きをして
091:締 修理とは尊き決意オルゴールのねじをきちんと締めあげてゆく
092:童 鉄橋をわたる車窓のさみどりのなかにまぎれて手を振る河童
093:条件 簡単な旅程のなかに条件があったはずだが忘れてしまう
094:担 重き荷を振り分けにして担ぎたり善しと悪しとをときどき替えて
095:樹 葉を落とす公孫樹並木のその下を帰路か往路かわからぬままに
096:拭 皿の上のソースを拭うパンのごと自ら汚れてゆく力とは
097:尾 さしあげてさらにいただく毎日だ語尾をしずめて眠りにおちる
098:激 そのむかし激しく責めしことなども朧月夜の酒の肴に
099:趣 同じものを時を違えて見る趣向 蝋梅の花咲くと告げたり
100:先 つま先は気の向くほうへゆきたがる同じ向きなら一緒に旅を
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by hasumikan | 2013-10-16 16:40 | 題詠blog2012